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【確定申告】いくらで買ったのか、わからなくても粘りなさい!〜不動産譲渡の所得税〜
年が明け、2月に入るとやってくる
確定申告のシーズン。
昨年に不動産を譲渡した人へ、
税務のプロ、岩佐税理士が
"あきらめない確定申告"をアドバイス。
目次
1. 確定申告がはじまりました!
2. 【5%ルール】の都市伝説
3. あきらめない確定申告
4. 確定申告は余裕をもって
1. 確定申告がはじまりました!
不動産を譲渡した人は確定申告が必要
所得税確定申告期間がいよいよ始まりました!
私たち税理士にとっては“お祭り期間”です(笑)。
今年の所得税確定申告期間は、
令和6年2月16日(金)~3月15日(金)です。
昨年(令和5年)に不動産を譲渡した人は、
この期間中に確定申告しなければなりません。
不動産の譲渡所得の計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却収入-(取得費A+譲渡費用B)
取得費Aとは不動産の購入費用であり、
譲渡費用Bとは仲介手数料や印紙税等が該当します。
2. 【5%ルール】の都市伝説
取得費がわからない場合、
とあるルールが存在しています。
確定申告時期に相談が多いのは「取得費が不明であるケース」です。
購入時期が相当以前であったり、
相続により取得した場合などの築古物件の場合、
購入時の資料が見つからず
一体いくらで当時買ったのか不明な場合があります。
この場合、実務上でよく使われる考え方が
概算取得費の計算としての【5%ルール】です。
これは、買った時の金額(取得費)が不明である場合
売った金額の5%を取得費とみなして、
譲渡所得の計算をしなければならないというルールです。
国税庁サイトにも以下の通り掲載されています。
国税庁| 取得費が分からないとき
例えば、父からの相続で10年前に取得した不動産で、
父が一体いくらでこの不動産を買ったのか不明で、
書類も一切残っていない場合を考えてみましょう。
この不動産を5,000万円で売れば、
その5%(=250万円)を差し引いた4,750万円の約20%(分離課税)の税金
約950万円がかかることになります。
《注》長期譲渡vs短期譲渡
売却した不動産の所有期間が【5年】を超えていた場合は
「長期譲渡所得」として税率約20%、
【5年】以下の場合は「短期譲渡所得」として税率約40%の税金がかかります。
「いやいや、父がそんなに安い金額で買ったはずはない!」
という声も聞こえてきそうですが、、、
残念ながら取得費が不明である以上、【5%ルール】を適用するケースが多く見られます。
国税庁サイトにも記載されているように、
【5%ルール】が都市伝説になっているのです。
3. あきらめない確定申告
都市伝説の5%ルールは
絶対ではなかった。
それでは、購入時の資料が見つからず、
当時いくらで買ったか不明であれば
自動的に【5%ルール】で計算しなければならないのでしょうか?
そんなことはありません。
ここは諦めず、粘ってほしいと思います。
合理的に取得費が算出できれば、
その金額を購入金額として確定申告することが認められています。
大阪国税不服審判所における「平成12年11月16日付裁決事例」によれば、
【5%ルール】以外に下記の取得費の考え方が登場しています。
① 建物は国土交通省が毎年公開の「建物の標準的な建築価額」に基づく。
② 土地は日本不動産研究所の不動産鑑定士による
年2回の価格調査による「市街地価格指数」に基づく。
③ 土地は取得時の売買事例から算定し、
建物は(譲渡価額の総額-土地の譲渡時の売買実例価額)を譲渡価額とし、
この金額から減価償却費を控除する。
④ 土地と建物の固定資産税評価額に基づく。
この審判所の裁決が物語っているように、
取得費が不明であっても、その計算上、合理的な算定ができるのであれば、
税務的に認められる事実が理解できるといえます。
概算取得費【5%ルール】で計算すると明らかに実際より安価になってしまうなら、
登記簿謄本に記載されている情報を基に取得費を検討する方が良いでしょう。
例えば、以下のエビデンスを最大限整理することにより、
実額取得費としての信ぴょう性が高まり、
税務的に認められる場合もあります。
① 預金通帳 … 購入時の出金状況
② ローンの償還表 … 住宅ローンの支払い状況
③ 登記簿謄本の全部事項証明書の乙欄 … 抵当権の設定金額の状況
④ 販売業者のパンフレット … 購入時の価格が記載
このように取得費を合理的に算定する方法は
いくらでも存在します。
税理士に相談し、税務的に認められる範囲内で
最大限有利に確定申告できるように努力して下さい。
4. 確定申告は余裕をもって
“後出しジャンケン”は
認められていません。
概算取得費【5%ルール】でいったん申告したなら、
更正の請求で他の方法を使っての申告は認められていませんので
ご注意ください。
また、取得費が明らかな場合は、
たとえ安いからといって他の合理的な方法による算定金額も
認められていません。
いずれにせよ、不動産を売った時の譲渡所得の確定申告をする際に、
取得費がどうしてもわからない場合は
武者小路実篤の下記の詩を思い出して下さい。
・・・・・
できる できる 真剣になればできる
できないと思えばできない できると思えばできる
どこまでも積極的にできることはできると信じ
永遠に自分は進歩したい
できる できる かならずできる
・・・・・
都市伝説を鵜呑みにすると大損します。
取得費が不明でも、まずは粘って下さい。
但し、確定申告期間ギリギリに動いては
タイムアウトになる可能性があります。
早めにアクションを起こして頂ければと思います。
当ブログを運営している三和都市開発は、 税理士とのパートナーシップを持っています。 相続に関するお悩みや、不動産資産の悩みについて お気軽にご相談ください |
【当ブログ執筆者】
TFPグループ
税理士法人トップ財務プロジェクト
社会保険労務士法人トップ労務マネージメント
税理士 中小企業診断士 代表兼CEO 岩佐 孝彦
TEL/06-4796-7771 mail/iwasa@tfp-j.com
公式サイト/www.tfp-j.com
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