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アマゾン元CEO ジェフ・ベゾス の婚前契約と、日本の「おしどり贈与」について税理士の視点で”警告”!
実際の事例をもとに、巷で「おしどり贈与」と言われる
節税対策の注意点を解説。
愛妻家への、愛のこもった警告です。
目次
1. 海外セレブの桁違いな婚前契約
2. 日本人は愛がゆえ策に溺れやすい!?
3. 「おしどり贈与」は総合的な判断が必要です
1. 海外セレブの桁違いな婚前契約
アマゾン創業者のジェフ・ベゾフ氏と、
元ニュースキャスターのローレン・サンチェス氏との婚約報道が先日ありました。
ベゾフ氏が最初の妻スコット氏と結婚したのは、アマゾン創業前の1993年。
自分が大富豪になると思っていなかったのか、「婚前契約」を結ばないまま離婚し、
約5.3兆円を支払いました。
しかし自らの資産保全のため、今回の再婚に際し
史上最高額の婚前契約を結ぶだろうと予想されています。
今回ベゾフ氏の婚前契約として締結される
「離婚した場合にサンチェス氏に支払われる金額」は、
以下の通りと言われています。
① 結婚1年あたり約1.3億円 ② 自宅
これに同意する代わりに、
サンチェス氏はベゾフ氏の資産の請求権だけでなく、
配偶者手当の権利も放棄することになるそうです。
大富豪のセレブのお金の世界は桁違いで、
付いていくことができません(汗)
2. 日本人は愛がゆえ策に溺れやすい!?
ベゾフ氏のような婚前契約は別としても、
私たち日本人で“おしどり夫婦”の場合、残された家族が困らぬよう
生前贈与や相続税対策に研究熱心な方が多いです。
ただ私(岩佐)が税理士として、声を大にしてお伝えしたいのは、
「家族愛が強いがゆえに策に溺れ、相続税対策に失敗する」
「策を講じたことが仇になり、税負担が増大する」
というケースが多く見られることです。
コロナ以前のずいぶん前のお話ですが、
某大手生命保険会社の全国各地の支社にて、
東京・静岡・群馬・栃木・愛知・高知・岡山・広島・山口・福岡など
約70拠点で相続税対策セミナー講師を私(岩佐)が務めておりました。
平成27年の相続大増税を受け、「生前贈与ブーム」が起き、
当時はこれを好機ととらえ、生命保険業界は税理士を講師に招き、
相続税対策セミナーを積極的に開催していたのです。
私(岩佐)の講演は、地元TVの取材を受け、
会場にTVクルーがお見えになったこともありました。
そんな流れで九州の某支社で登壇した時のこと。
セミナー開催前に早めに会場到着した私(岩佐)の目に
初老の男性の姿が目に入りました。
その男性は受付で、「先月受けたセミナーの講師に質問したいことがある」と懇願されていました。
この支社では当時ほぼ毎月セミナーを開催し、
複数の税理士を交代で講師に招いていたようです。
先月の担当講師は私(岩佐)ではなかったのですが、
セミナー開始まで時間の余裕もありましたので、
この男性を講師控室にお招きし
特別に個別相談に対応しました。
聞くところによれば、この男性は地元で製造業を営む経営者で御年63歳とのこと。
相談の要旨は以下の通りです。
● 長年自分の事業を内助の功で支えてくれた妻に感謝の意を形として示したい。
● 自分名義の自宅不動産を妻に生前贈与したい。
● 生前贈与しておけば、妻も安心してくれるはず。
● 先月受けたセミナー講師の税理士の話で、
「おしどり贈与 = 結婚20年以上の夫婦の場合、自宅不動産2,110万円まで生前贈与しても無税になる特例」
…のことを知ったので、是非やりたいと思っている。
さあ、ここで質問です!
この経営者が“地雷”を踏もうとしていることにお気づきでしょうか??
3. 「おしどり贈与」は総合的な判断が必要です
私(岩佐)はヒアリング後、この男性に助言しました。
その要旨は以下の通り。
● 奥様に自宅不動産を生前贈与しない方がよい。
● 自宅不動産は敢えて生前贈与せず、相続まで待った方が有利だからだ。
● 確かに先月のセミナーの担当税理士が言う通り、「おしどり贈与」と呼ばれ、
婚姻20年以上の夫婦の場合、自宅不動産を生前贈与しても無税になる特例あり。
決して間違いではない。
● しかし、その論点は部分最適にすぎない。
● 無税になるのは、国税の贈与税だけで、同じ国税の登録免許税(不動産価格の税率2%)はかかる。
● 県税の不動産取得税(不動産価格の税率3%)も別途かかる。
● もし相続まで待てば、以下の課税関係になる。
*登録免許税5分の1でOK (税率0.4%)
*不動産取得税に至ってはゼロ円
● 自宅土地は相続時に小規模宅地の特例(80%割引)の適用OK。
上記助言をした後、
「本当にありがとうございます。税金って色々あるんですね。
大きな損をするところでした。助かりました!」
と喜んで頂きました。めでたし、めでたし。
相続税対策のセミナー講師は私(岩佐)も含め、「節税を語ってナンボの世界」です。
サービス精神旺盛で、優遇税制の話を当然盛り込みます。
「おしどり贈与 = 婚姻20年以上の夫婦間贈与の特例」で贈与税ゼロになる話は定番といってもよいかもしれません。
国税OB税理士の著書の中でも奨励されているケースを目にします。
ただ国税OBと言っても、やはり国税のことしか理解していない税理士も多いため、
贈与税以外の登録免許税・不動産取得税も包括した移転コストまで精通していない人も多いのです。
「おしどり贈与」でゼロになるのは、贈与税だけなのです。
課税関係すべてを精査しなければ、実行しても意味がありません。
相続税対策は部分最適でなく、全体最適で行うことが肝要です。
良かれと思って実行したことでかえって痛い目に遭うのです。
巷に相続税に関する情報が氾濫しています。ネットですぐに拾うこともOKでしょう。
しかし、知っているつもりが仇になることがあるのです。
確かに相続税対策が後手後手に回るケースが多い中で、
先手先手で打ち手を実行する姿勢は賞賛すべきです。
但し、正しい知識を身に付けなければ、せっかく実行してもかえってマイナスになる。
相続の世界は往々にして、こんな事態が起きやすいのです。
「策士、策に溺れる」と言いますが、「愛妻家、策に溺れる」という現象も起こります。
妻を大切に想うことが仇になるなんて理不尽甚だしいですが、、(怒)
日本の税制の厳しい現実も知っておいて下さいね。
まとめ
セミナーなどで相続税対策の話を聞いたときは
それが全てだと思わないようにしましょう。
「おしどり贈与」も、部分的には最適な節税に
みえることがありますが、総合的に見ると
マイナス面が出てくることがあります。
自身でも知識をつけつつ、専門家の知恵をかりることで、
総合的・効果的な相続節税を納得して行っていくことができるはずです。
当ブログを運営している三和都市開発は、 税務のプロとの強い連携があります。 家族のための相続税対策を行う際は、 ぜひ私どもの知恵と経験を頼りにしてください。 |
【当ブログ執筆者】
TFPグループ
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